014 東南アジアの民族運動（教科書328ページ）

今回のポイントは大きく２点あります。１点目は，ベトナム・インドネシアがフランス・オランダに対してどのような民族運動を行ったのかについて見ていきたいと思います。

ベトナムの民族運動 

まず舞台はベトナムです。このベトナムですが，当時フランスの支配下におかれていました。まずは位置を確認しておきましょう。ベトナムの位置ですが，当時はフランス領インドシナ連邦に組み込まれていました。さぁ，そのフランスの支配に対してまず立ち上がった人物がファン・ボイ・チャウでした。このファン・ボイ・チャウは，フランス支配から脱却するために維新会を結成します。この維新というコトバからも推測ができますが，日本の明治維新を参考にしているんですね。さらに，ファン・ボイ・チャウは日本に多くの留学生を送り込むことによって，日本流の近代化を勉強しよう（ドンズ―運動）としました。ちょうど，この運動が起きたタイミングは，日露戦争における日本の勝利です。日露戦争は確かに両者ともにいギリギリのところで戦っていましたが，欧米の一角であるロシアと互角に戦った日本にファン・ボイ・チャウは感動したのです。「アジアだって頑張れば欧米に追いつけるんだ！日本はすごい！だから日本を見習ってベトナムも近代化できるはずだ！」ということでドンズ―運動という日本への留学運動を行ったのです。ところが悲しいことに日本はこのあと，フランスと手を組むことになります。フランスと手を組んだ結果，ドンズ―運動は日本政府によって弾圧を受けてしまういます。そこで今度はファン・ボイ・チャウは，ベトナム光復会といって中国の革命運動をモデルとしたベトナムの自立に向けての運動を考えます。このように最初は日本をモデルにしていたが，途中から中国モデルに変わったということを覚えておきましょう。

インドネシアの民族運動 

そして，似たような動きはベトナム以外にもインドネシアでも発生しました。当時のインドネシアはオランダに支配されていましたが，それがどのあたりの領土なのかを地図で確認しておいてください。さきほどのベトナムは，フランス領インドシナ連邦に位置していると言いましたが，当時スマトラ島・ジャワ島・ボルネオ島などを併せてオランダ領東インドと呼ばれ，この地域はオランダの支配下に置かれていました。そのオランダ支配下のインドネシアでは，サレカット＝イスラームという組織ができます。このサレカット＝イスラームの意味ですが，イスラーム同盟といってイスラーム教徒達が中心となってできた組織に商人や知識人を中心に組織を拡大し，やがては自治を求めるようなります。いいですか？ベトナムだけではなくてインドネシアもこのようにヨーロッパ支配から脱却しようという民族運動が発生していたことを覚えておきましょう。

フィリピンの民族運動

実は，フィリピンはちょっとかわいそうな地域でもあります。まず，フィリピンは当時スペインの支配を受けていました。その支配に対して，ホセ＝リサールという人が小説を書いてスペインの暴政を暴露し，批判していたのです。彼は武力に頼るのではなく，執筆活動を通じてスペイン政治を批判していたんです。しかし，このあとスペインから「おい！おまえ，反乱を起こそうとしていただろ！！」っていう意味不明な罪をきせられて銃殺刑にあってしまい，ホセ＝リサールは殺されてしまいます。このホセ＝リサールにかわって登場したのが，アギナルドです。アギナルドはスペイン支配からの独立をめざし，フィリピン革命を指導します。しかし，スペインはアギナルドを捕まえるために軍隊まで送り込んでくるのでした。アギナルドは一時，革命政府大統領にまで就任したのですが，スペインに追われて結局各地をに逃げ回ることになります。そして，このアギナルドは，あるタイミングでまたフィリピンに戻ってきます。「よし！今がチャンスだ！」ということで，それが1898年のアメリカ＝フィリピン戦争のときでした。アメリカがスペインと戦っているところを受け，アメリカの援助もあり，アギナルドがフィリピンに帰国してくるんだ，そしてアギナルドはフィリピン共和国を建国することに成功します。やったー！ついにフィリピンから独立を勝ち取った！とみんなでよろこびました。しかし，アメリカ＝スペイン戦争で勝ったのはアメリカ，負けたのはスペイン。このあと，フィリピンはなんとアメリカの領土になってしまうのです。

もちろんフィリピンの人たちは「あれ？独立できたんじゃなかったのか？なんでアメリカに支配されることになるんだ！」と激怒しました。そして起こったのがフィリピン＝アメリカ戦争です。スペイン支配の次はアメリカかよ！俺たちに自由をくれよ！ってことで戦争を起こしましたが，結果としてはフィリピンは負け，アメリカが勝ち，アギナルドが逮捕されたことによって，フィリピンの独立は失敗します。