世界史オンライン講義録

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026 戦勝国アメリカの栄華(教科書345ページ)

今回は世界大戦後ナンバーワンの座を奪い取ったアメリカについて見ていくことになります。今回のポイントは大きく2点あります。第1次世界対戦を勝利に導いたアメリカのウィルソン大統領急速に保守化するアメリカ社会一体ウィルソンの時代に何があったのかを見ていきます。そして2点目がこちら排外的なアメリカ社会の裏の顔。 政権下に露わになったアメリカの光と影を見ていきますこのように今回はポイント二つを通して第一次世界対戦後のあアメリカの栄華について見ていきましょう。

 

急速に保守化していくアメリカ 

ポイントの一点目です。第1次世界大戦を勝利に導いたウッドロー=ウィルソン大統領の時代アメリカ。一体何があったんでしょうか?

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このウィルソンは民主党の大統領でした。第1次世界大戦を勝利に導いた大統領ですね。このウィルソンは,アメリカ国内ではまず禁酒法というのを制定します。実はこの禁酒法というのは読んで字のごとくお酒を作ったり売ったりしてはいけないアメリカの厳格なプロテスタントの意思を反映した法律だと言われてます。そして注目するべきは このウィルソンの時に女性参政権が与えられたということなんです。アメリカ合衆国は男女平等の選挙権が与えられることになります。なぜ世界大戦の後に女性参政権なのか?これは 第1次世界大戦が男性だけではなくて女性の力も必要としていたからですね。覚えてますか?これが総力戦と呼ばれる体制です。第1次世界大戦は兵隊さん以外も女性であっても国家のために協力をする。なので女性は兵器工場で働いたりしたんですね。 総力戦を受けて女性の社会的な地位が向上します。女性にも選挙権を与えなければならないでしょ?だからそこでウィルソンは女性参政権を実現したんですね。

 

ところが,この第1次世界大戦が終わるあたりからアメリカは急速に保守化していきます。「第一次世界大戦でヨーロッパに絡みすぎだ!アメリカはアメリカ!ヨーロッパはヨーロッパ!お互い関与しない,お互い不干渉であるべきだ!!」これがアメリカのモンロー大統領のときから続いている孤立主義外交です。しかし,第1次世界大戦でアメリカはヨーロッパに関与しましたね。それを快く思ってない人たちもいたんです。そして,せっかくウィルソンが国際連盟の発足を提唱したのにアメリカの上院議員の反対もあってベルサイユ条約への批准を拒否することになります。ベルサイユ条約への批准を拒否したのでアメリカは,国際連盟に不参加ということになります。ウィルソンさんはもともと連盟には入りたかったんだけど,反対もあって入ることはできなかったというわけです。このように第一次世界対戦後のアメリカは急速に保守化していきます。このウィルソンの民主党のときよりも,さらに保守的な共和党が政権を取ります。

 

排外的なアメリカ社会の光と影

ポイントの2点目です。排外的(外国人出ていけ!外国を追い出せ!)なアメリカ社会の光と影を見ていきましょう。ウィルソン大統領の後は,合計3人の共和党の大統領が続く時代となります。ちなみにこの共和党というのは,民主党よりもさらに保守的な政党です。保守的というのは,「昔に戻そう!昔の方がいい!あまり新しい改革とかはしたくない…。」そういう政党のことです。まず,この共和党政権の時代にまずアメリカは債務国から債権国へとのしあがります。もともとアメリカは第1次世界大戦前は, 債務国(借金を抱えてる国)でしたが,第一次世界大戦後,見事債権国に変わったんです。お金を返す側から返してもらう側に。 つまり,他の国に貸すくらいの余裕ができたということですね。第1次世界大戦で連合国の兵器工場となり莫大な利益を得たということなんですね。ちなみに,このころのアメリカの生産様式は大量生産大量消費でした。たくさん物を作る,そしてたくさんそれを人々に買ってもらう。そして,大衆消費社会というのが形成されるんです。ラジオ放送や雑誌などで「今年の流行商品はこれです! 」といったように新しい商品が紹介され,「よし!じゃあ買いに行こう!」といった消費者が増えたんですね。いわゆる大衆消費社会が実現します。どこか現在の我々の生活に似てますよね。新聞やテレビなどで新しい商品を見つけて「よし!この商品を買いに行こう!」そして,行ったら既に売り切れなんです。そういう大衆消費社会というのがこの頃から始まります。

 

こうやって繁栄していくアメリカ合衆国なんですが,実はアメリカ社会ではワスプ(WASPと呼ばれる人たちが徐々に力をつけてきます。

白人であり,アングロサクソン系の民族であり,プロテスタント。これがアメリカの中心なんだという考え方です。そして,このワスプの考え方に基づいてワスプに該当しない者は次々と迫害を受けます。例えば黒人です。その黒人を迫害する組織K・K・K(クークラックスクラン)が活動再開します。

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しかも,今回のK・K・Kは黒人のみならず黄色人種・中国系の人や日本型の人もターゲットにしていくんです。ワスプ以外を排除する動きがアメリカでは強くなる。さらにはこんな最悪な事件も生まれてしまいました。サッコ・ヴァンゼッティ事件です。これは二人のイタリア系アナーキストアナーキストというのは無政府主義という意味で「政府はなくなればいい」というちょっと過激な思想を持つ人です。そしてこのサッコさんとヴァンゼッティさんはとある殺害容疑で捕まり証拠不十分のまま死刑が決まります。ワスプではないという差別の芽がそのサッコとヴァンゼッティの有罪判決をあとおしちゃったわけです。ちなみにこれは,アメリカ史上最大の冤罪事件といわれています。

 

そして,民法を制定してアジア系移民を全面禁止して「アジアからの移民は一切受け入れない!」としたのです。このように繁栄していく中で自分たち以外の民族や人種を敵とする。 社会の裏の顔があったということを覚えておいてください。