世界史オンライン講義録

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009 日清戦争(教科書301)中国分割の危機(教科書321ページ)

今回は,清(中国)についてです。清(中国)はいままで「眠れる獅子」といわれ,「清(中国)に手を出すといつか噛まれるぞ」「清(中国)の実力ってのはあなどれないな」と世界から恐れられていたのですが,格下とみられていた日本に日清戦争では負けてしまいます。世界からは「これは本当に清(中国)は弱いのでは?」とか「太った豚」とか言われるほどになり,様子を見ていたヨーロッパ諸国が一気に中国に襲いかかる,そういった姿を今回はみていきたいと思います。

 

三国干渉

「眠った獅子」ではなく本当に弱体化していることがバレてしまったことで列強の中国分割が加速していきます。遼東半島という半島を地図で確認してください。この遼東半島を舞台に,中国分割の一つの流れとしてロシアがドイツとフランスを誘い,三国干渉を実行します。もともと日清戦争で日本が勝利しをしてゲットした遼東半島なのですが,その遼東半島を「返せ返せ!ロシア・ドイツ・フランスに返せ!」って言われてしまいます。この3カ国から直々に返せ!っていわれたひにゃ,日本も返さざるを得なくなり,日本は遼東半島を返還します。清からすれば「ありがとうロシア!遼東半島を取り戻してくれて!」ってな感じですよね。ですので,清はその見返りとしてロシアに東清鉄道の敷設権を与えます。

 

中国における列強の租借地と勢力範囲

まずはコトバの意味から。列強の租借地というコトバがあるのですが,これは「借りている土地」ということです。期間限定でその国の一部になっている状態でもあります。例えば,もともとは清のものだんだけども,他国の人々が清のそのエリアに立ち入ってそこで利益を得ようとするような,一種の縄張りのようなものだと思ってください。

 

イギリスの租借地

イギリスは,威海衛(いかいえい)という非常に良港,そして,香港にある九竜半島を期間限定で自分の国の一部としていました。おもに長江流域から商人を派遣して,この縄張りから利益を吸い上げようとしました。

 

フランスの租借地

フランスは,広州湾を自分の国の一部として,清の南部エリアも租借地としました。

 

ドイツの租借地

ドイツは膠州湾(こうしゅうわん)です。ドイツは山東半島のあたりを勢力範囲としました。

 

ロシアの租借地

ロシアは,遼東半島南部を自分のものにして利益を吸い上げようとしました。(のちに日本のもとのなります。これは日露戦争でロシアが日本に負けてしまうからです。)

 

このように,清はまたたく間に「オレたちの縄張りだ!」「こっからここはオレの縄張りだ!」と主張されてしまい,ここが日清戦争で日本に負けたことで一気に弱体化を見抜かれてしまった清の痛いところですよね。

 

さてアメリカはというと,もちろんこの中国の分割競争に参加はしたかったのですが,実は自国では南北戦争の最中だったため中国の分割競争に出遅れてしまいました。いざ中国を!と思ったらほとんどが埋め尽くされているわけですね。そこでアメリカは「おーい!中国分割にオレも参加させてくれよ!」と主張を宣言します。このことを門戸開放宣言といい,国務長官ジョン=ヘイは「門戸開放」「機会均等」「領土保全」の3原則を主張しました。「おいおい!ドイツ,イギリス,フランス,ロシアよ!アメリカにも中国分割競争に参加させてくれよ,門戸を開いてくれよ!アメリカにもチャンスを与えてくれよ!しかし,中国の領土は守ろうぜ」っていうわけです。たとえば,膠州湾が完全にドイツ領になってしまうと,アメリカはそこに踏み込めなくなってしまいますよね。だから清の領土は領土としてそのままにし,縄張りは各国の縄張りのままでいいから,とにかく経済に軸足においてアメリカは中国への進出を考えたのでした。ここらあたりが,遅れてやってきたアメリカなだけに,なんとか自分たちの国がもうけていけるようなしくみづくりを模索している様子がわかりますね。

 

ということで。このように清からするといろんな国に食われてしまった状態でよっと悲惨な目にあってしまうのが今回のお話でした。さて,危機感を感じた人々は清をどのように立て直していくのでしょうか・・・。今回はここまでです。