世界史オンライン講義録

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024 戦後の国際秩序の維持(教科書340ページ)

今回は第1次世界大戦後の国際秩序を維持するための方法を勉強していきましょう。また,大きな世界戦争を引き起こすわけにはいかない,新しく生まれた秩序どうやって守っていくのか見ていきましょう。

 

国際連盟の発足とその問題点

さて,国際連盟と呼ばれる世界で初めての集団安全保障組織が成立します。その組織とは一体何なのかを見ていきましょう。 まず,集団安全保障というのは一体どういう意味なのでしょうか?それは,みんなで協力して平和を守ろう!みんなで協力して平和を維持しよう!という組織です。その集団安全保障組織として第一次世界大戦後に登場したのが国際連盟です。ちなみにこの国際連盟は本部をジュネーブにおき,連盟の最高議決機関として総会が置かれることになります。そして,この国際連盟を引っ張っていく中心的な国々それが理事会です。理事会のメンバーは,イギリス・フランス・イタリア・日本の4か国が常任理事国として引っ張っていったのでした。ちなみに,その常任理事国をサポートするのが,非常任理事国と言います。

 

そして,この国際連盟は紛争の仲裁だけではなく,さらにちょっと変わった組織も生まれます。それが,国際労働機関(ILOです。機関の面白いところは労働問題の調整機関として発足した組織なんです。 それにしてもなぜ労働問題を調整する必要があるのでしょうか?実は,この国際労働機関は,労働者が不満を貯めてロシアのように革命を起こすことを何よりも恐れていたんです。そのため,社会主義革命を阻止するんだ!っていうのが国際労働機関の狙いです。ロシアのようなことにはならないように先に調整してしまおうというのが国際労働機関の役割だということです。

 

ここまで順調なように見える国際連盟なんですが,実は問題点を抱えてました。 国際連盟が抱えていた大きな問題,それは何だったのでしょうか?それはまず,提唱国であるアメリカが,国際連盟に入っていないということなんです。アメリカは国際連盟に入ってません。なぜアメリカが入れなかったのか?はこの後でお話をしていきます。アメリカは,国際連盟に入っていないし,しかも脱退や参加が自由なんです。世界ナンバーワンのアメリカがまずこの組織にいないということと,さらには全会一致の原則といって,実は連盟の最高議決機関である総会は,全加盟国一国一票に基づいた全会一致の採決方法をとります。結果的に,各国の利害関係で機能しません。それこそ何十カ国という国が話し合いをするので,全会一致はなかなか難しかったんです。だから,総会があまり機能しないということ,そしてなによりも,制裁規定の欠落です。連盟の勧告を無視した国に対しての制裁規定を持たないんです。だから,実際に国際連盟を無視しても問題はないんです。

 

このように,世界ナンバーワンのアメリカが入っていないということと,全会一致の原則で機能しないということ,制裁規定が欠落しているということ,これが国際連盟の欠点なのですね。だから,二度目の世界大戦を国際連盟は防ぐことができなかったわけです。

 

東アジアの新しい国際秩序

今度は打って変わって東アジアです。ドイツが結局いなくなりますので,東アジア,中国の植民地とか太平洋植民地を一体どうするのか?東アジアの新しい秩序の形成をみて行きましょう。

 

そして,ここでちょっと気にしてもらいたいのが,東アジアの国際秩序を形成するのは実はアメリカが 中心となったということです。そのため,東アジアの秩序形成に至っては,アメリカで開かれたワシントン会議で,東アジアの新しい秩序を決めていこうとしていきます。ちなみに,東アジアの秩序を決めようという名目とは裏腹に,実はこれはアメリカが日本を抑えつけようとしているものでもあるのです。日本の抑制,これがワシントン会議の目的の一つです。第1次世界大戦を通して,日本は急成長しましたし,中国にも進出しました。そして,日本は被害にはあってません。日本国内がドイツから攻撃を受けたということはありませんので,国力は強く残った状態です。そこで第1次世界大戦後,アメリカはこの日本を警戒します。「急に成長してきたな」「邪魔だなぁ」という思惑もあり,日本を抑えつけようとしてきたんです。

 

例えば,四カ国条約では,太平洋地域における領土及び権益の相互尊重をうたいます。 この結果,日本はもう戦争に巻き込まれることはないとして日英同盟が解消されることになります。日本とイギリスを切り離した,これが四カ国条約による内容です。さらには今度は中国に関する主権と独立の尊重という形で,九カ国条約が締結されます。「おい!日本!中国は独立国なんだ!中国の主権を尊重しろ。植民地みたいな扱いしちゃ駄目じゃないか!」とそこで中国側に突きつけた二十一カ条要求はこの九カ国条約で実質失効します。完全に太平洋中国における日本の勢力を弱めようとしたのです。

 

さらにそれだけではありません。ワシントン海軍軍備制限条約の締結です。このワシントン海軍軍備制限条約では,主力艦の保有比率を決めます。主力艦というのは,海軍のメインの船のことです。戦いの中心となる船,この主力艦の保有比率をアメリカ:イギリス:日本:フランス:イタリアで,5:5:3:1.67:1.67という形で各国の主力艦の保有比率というの固定していきます。 そして,このように皆の持っている主力艦を減らしていこうという意味で,軍縮していきます。世界大戦を反省してみんなで軍備を縮小していこう!そうすれば大規模な戦争にはなりませんので,そういった目的もあったといわれています。

 

アメリカは国際連盟には参加していません。だから,自分が個別に動いて自分の作りたいような秩序を作っていくといったように,第一次世界対戦は国際連盟とアジア太平洋域においてはアメリカが指導力を発揮したことになります。